特別な外泊

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        「おやすみ」と「おはよう」を言う相手がいる幸せ・・・

 A様は転倒を繰り返し、何度も骨折されました。その後慈光園のショートステイを利用開始。経過は順調でしたが、在宅復帰は困難とのことから、特養である慈光園に入居することとなりました。

 A様が慈光園に入居されてから、月1回の自宅外泊を楽しみにされながら、日々の運動等をご主人と一生懸命取り組まれて過ごしてきました。

 平成26年8月右大腿骨頚部骨折により入院。手術は行わないこととなり、慈光園で過ごすほうが良いとのことで未完治の状態で退院。それから1年。奇跡的な回復により、つかないと思われた骨は60%もついていることが分かりました。しかし、普通型の車椅子では座位姿勢が安定しないため、本人用の車椅子を申請。車椅子完成後、誕生会を機にあきらめかけていた自宅外出を行いました。自宅に到着するとご主人が出迎えられ、仏様にお参りし、ご主人の手料理を食べました。

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 その後何度か自宅外出を行う中で、ご主人から「もう一度、一緒には寝れないもんな」と言われました。その場で、「できるかどうか分かりませんが職員付き添いでの外泊はどうでしょうか。」と提案しました。職員付き添いの自宅への外泊は前例が無かったので、管理者や多職種で検討を行い、実際に行うことに決定しました。

 自宅外泊当日、夕食の時間にめがけて17時半ごろ慈光園を出発。到着するといつものようにご主人が出迎えられ、待ってましたと言わんばかりに夕食の準備をされていました。その日の夕食はA様の好きなものばかりで、カレイの煮つけや煮物が並んでいました。日中のうちに味付けし、やわらかくとても美味しそうでした。

 ご主人の食事介助でしっかりと食事をすまされ満足そうな顔をされていました。夕食後はリビングでテレビを見ながら過ごし、落ち着いてからご主人と隣り合わせのベッドに横になりました。ご主人が眠る前、A様に「おやすみ」と言われ、やすまれました。

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 ご主人がA様に言われた「おやすみ」の一言は誰しも簡単に言っていることですがここでの「おやすみ」は特別な想いのある一言に感じました。

 奥さんにご飯を作って一緒に食べる、リビングでくつろぐ、隣で一緒に寝る、「おやすみ」「おはよう」の一言。一緒にいれば当たり前ですが、施設に入居していれば叶えられません。ご主人にとっての生きがいや、お二人に夫婦愛を感じました。

 一泊という一時の時間ではあったと思いますが、特別な時間を少しでも多く続けていけるように、これからもご家族、利用者様の願いに寄り添えるケアを行っていきたいと思います。

             (特別養護老人ホーム美瑛慈光園 花の棟 介護職員)